| 賞 | 優秀賞/Excellent Award |
| 受賞者 | 株式会社 竹影堂 金工作家 錺職人 7代四世 竹影堂 榮眞(中村 佳永)(ちくえいどう えいしん)(なかむら よしなが) |
| 工芸・美術部門/金工 | 南鐐 方円 水指(なんりょう ほうえん みずさし) |
作品情報
南鐐 方円 水指(なんりょう ほうえん みずさし)
サイズ… W 15.7㎝ D 15.7㎝ H 17.8㎝
素材… 純銀
技法… 鍛金・彫金
水は容器の形に合わせて姿を変えるように、人も環境や交友関係によって善にも悪にも染まるという、
中国の思想・詩に由来する故事成語・ことわざです。
また、禅語における「方円」は、柔軟な適応力や環境に左右されず形を変える無心さを表します。
四角い容器では四角く、丸い容器では丸くなる水のように、執着を持たず、
あるがままに生きる境地を指す言葉です。
この作品は茶道具、水指です。本体を円から角に変化する形状にする事で
水指全て(本体、蓋、摘み、)純銀を用い全てで加工で製作しました。
本体は0.8ミリの板から鎚起(手絞)技法を用い上口の部分は3ミリと
厚みを持たせ見栄えと強度、重量感をよくしています。
円から角に変化する形で蓋との合わせ目を平らに出来るのは手仕事ならではの技術です。

審査委員の講評
外舘和子(多摩美術大学 教授、工芸史家)
作品タイトルにあるように、上から見ると、口縁や蓋は四角い形状、底は円形を示す「方円」であり、しかも口縁と底の間が無理なく自然につながり、柔らかな雰囲気の水指となっています。「方円」は禅の世界で、容器が四角なら四角に、容器が円(まる)ければ円くなる水の柔軟さを意味しており、その東洋的な思想を水指のかたちで表現したものといえましょう。
板状の金属(この作品では純銀)を、金鎚と当て金を用いて繰り返し叩いていく高度な鍛金の技術を基本に、本来、硬質な金属素材でありながらも、優しくふくよかな表現としています。水指の本体や蓋の表面に見られる網目のような叩いた跡(鎚目)も、金属のフォルムに美しい光沢や変化を与えています。
蓋のツマミも、小さいながら、四つの柱と「円」を組み合わせて作られており、この水指全体の形状との関係性、整合性を築くと同時に、洗練されたポイントとして、この水指の品格を示すものともなっています。
金工作家は、陶芸家などの数に比べると必ずしも多くありません。茶道具においても、鋳物の釜などを除けば、陶磁器を中心に、竹、漆などを用いた道具の方が多いでしょう。その意味でも、金属の水指は、茶道具としても非常に新鮮な存在です。
この作者は京都で7代続く金工家・竹影堂の当主として制作を続けるとともに、後進の指導にも積極的に努めてこられました。今後もより一層、金工の魅力を、茶の湯という日本の主要な文化を支える茶道具をはじめ、さまざまなアイテムで伝え広めていくことが大いに期待される作り手です。
プロフィール
株式会社 竹影堂 金工作家 錺職人 7代四世 竹影堂 榮眞(中村 佳永)(ちくえいどう えいしん)(なかむら よしなが)(所属:京都作家協会、京都匠会、京都金属工芸協同組合)

<略歴>
1958年 京都出身(本名:中村 佳永)
1973年 父・六代目三世竹影堂榮眞 (中村 精一郎) に師事
1990年 京錺(株)竹影堂を設立、三世榮真の命により竹影堂佳永の称号を得る
2007年 京都伝統工芸大学校 金属工芸専攻科講師 就任
2009年 四世竹影堂榮眞を襲名
2018年 京都府伝統産業優秀技能者 表彰
京都工芸美術作家協会・京都府匠会 所属
金属産業の機械化が進んだ現代においても、手作業にあえてこだわり、茶道具の制作や高い芸術性を生かした作品展を開催
京錺の魅力的な仕事を伝え、現在も後継者の育成に努めるべく学生の指導に当たっている
<受賞・展覧会歴他>
1991年 大徳寺 玉林院 竹影堂展
1992年 芸術文化交流の会にて高円宮憲仁殿下、久子妃殿下の御賞賛を頂く
1997年 京都高島屋美術工芸サロン個展
2002年 神輿金具の華鬘の検証及び復元製作
2004年 東京京王百貨店 個展
2010年 京王百貨店・京都高島屋 襲名展
2011年 大徳寺 聚光院 庫裏 引手・釘隠し 製作
2018年 京都髙島屋、京都野村美術館 還暦展
2022年 京都髙島屋『七代 竹影堂榮眞・中村鎚舞 茶の湯金工展』 など
2025年 第5回日本和文化グランプリ2025 優秀賞 受賞
◆受賞コメント
この度は、昨年に引き続き栄えある賞を賜り、大変嬉しく、心より感謝申し上げます。
私が日頃、作品に用いる素材は金属で、特に銀が好きです。
柔らかな光沢、熱伝導の良さからくる肌触り、「いぶし銀」と例えられるように使えば使うほど増していく味わい、薬品をあまり使うことなく手加工ができ、切りクズからヤスリ粉まで再生可能な上、永遠に残り続ける、そんな銀で、今回も私なりに思いを込め作品を創作いたしました。
その作品をこのようにご評価いただき、今回の賞を頂戴できましたことを、本当に嬉しく思っております。誠にありがとうございます。
今回の受賞に驕ることなく、これからも職人として培ってきた伝統的技術で、新たなデザインやコンセプトで金属と向き合い、作品を通じて和文化の大切さ、素晴らしさ伝えていきたいと思います。
この度は、誠にありがとうございました。
◆受賞者ホームページ
HP:https://chikueidou.com/
Instagram:https://www.youtube.com/channel/UCmtOXup2vsgvGFE5HZi21iQ



