2022年度受賞者

【総論】
審査委員長 三田村有純 記

和文化とは何かが2回目にして明確になりました。
今回は応募が昨年より若干減りましたが、応募された作品はいずれも、レベルが高く確かな技術と創作への豊かな感性、そして哲学を合わせ持ったものでした。
入落の審査は、書類で厳正に行い、受賞審査にあたっては、審査員全員が参加をして何回もの投票を繰り返して絞っていきました。作者に関する情報などは伏せ、作品から受ける力を審査員一同が皆で討論し、結論を出すこととしました。
審査員が多彩で、年齢も幅広く、さまざまな観点からの意見が飛び交い、明日の日本を担う作品を見つけるのです。この和文化グランプリは単に作品を集めて賞を決めるだけではありません。発表の展覧会が終了した後に、銀座と六本木の順理庵にて順番に展覧会を開催し、紹介をして参ります。
ここに選ばれた作品が今の日本の伝統文化芸術を具現化したものです。多くの方に直接見ていただき、今後の日本のいくべき道を体感してほしいと思っています。
グランプリ/Grand Prix

【受賞者】 羅琪
【受賞作品】 Chiritori×Houki

【受賞評価】審査委員 襟川文恵 記
道具としての優れた機能性もさることながら、その洗練された佇まいに目を奪われた。そして、握った時の穏やかな感触、優しい色彩、掃く音はさながらホウキモロコシの声。作り手の美意識が細部にまで行きわたったデザインは、日本の自然観を湛えながら、「掃除」という行為と「使う人の姿」を美しいものへと変えていく。この小さなチリトリとホウキが内包しているのは、「清らかさを貴ぶ日本の心」そのものであり、和の生活文化を体感的に世界へ伝播する力である。

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準グランプリ/Semi-grand Prix

【受賞者】 佐々木岳人
【受賞作品】 Ether

【受賞評価】審査委員 田中里沙 記
伝統と革新。和文化の精神と本賞のパーパスが形になって現れたような作品である。ファスナーは開かない。表面は革製品に見えて、革ではない。蓋を開けると、艶やかな漆が広がる。思い込みはあっさりと裏切られた。そして触れる人、使う人の想像力を広げるパワーに満ちている。作り手はこの様子を想像して、にんまりしているのではないか。多くの気配りを施しながら、見事な匠の技が軽やかに決まっている。楽しい驚きを受けた。

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準グランプリ/Semi-grand Prix

【受賞者】 藤田和 (NAGOMI Fujita)
【受賞作品】 『和 nagomi の酒器』

【受賞評価】審査委員 長谷川祐子 記
準グランプリ 和 nagomi の酒器はアールヌーボーの、植物に対する観察や繊細な造形化を透明なガラスの生命感と重ねていく精神との共通点をもっている。
「和 nagomi の酒器」では植物の線的な表現はよりライトだがそれがいくつものレイヤーや形の重なりあいによって、その場の雰囲気に浸透してくような共鳴を生み出している。漆や箔 などの伝統技法をさりげなく幾重にもつかいながら、そこに「植物という生」のいきづかいをもたらす。現代的なエコロジーのとりこみといえる。

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優秀賞/ Excellent Award

【受賞者】 児玉理文 ・ 石川大樹
【受賞作品】 Floating Boat Counter ―舟のように浮かぶカウンターテーブル―

【受賞評価】 審査委員 堀越英嗣 記
この作品は日本建築の伝統的技術である「舟肘木」をモチーフに、住まいの中心である家族のくつろぎの場所で建築と家具を一体化する実用性と日本の木構造の美しさを現代に生かした優れた作品である。
舟肘木は日本の伝統的建築の中で住居系の建築、京都御所清涼殿、園城寺光浄院客殿等で使われ、寺社建築の斗栱とは異なる優美で品格のある構造意匠である。本作品ではその美しく洗練された舟肘木をモチーフに建築と一体化したテーブルとして立体的に構成し、住まいの中心として家族が楽しく集まる美しい空間を作り出しており、優秀賞にふさわしい作品である。

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優秀賞/ Excellent Award

【受賞者】 平山日用品店 平山和彦・真喜子
【受賞作品】 patol stool SEIZA

【受賞評価】 審査委員 秋元雄史 記
折りたたみ式の正座補助椅子であり、すぐにでも実用化できそうなコンセプトで、審査員からも好評であった。畳文化を気軽に楽しむのには、うってつけの補助器具で、めっきり正座の機会の減った現代人には強い味方になりそうだ。椅子の高さやサイズ感、それに細かく折りたためる収納あたりが、いい塩梅で、今までにはなかったものである。身体のサイズに対応したバリエーションや蝶番のデザイン性の検討など、さらに美しくなる可能性を秘めた傑作である。

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【審査委員講評】
審査委員 Richard Collasse 記

Invited as one member of the jury of the first 日本和文化グランプリ, I unfortunately could not physically attend and participated from Geneva in Switzerland via the Video Conference system perfectly organized by the team. I was lucky this time to be in Japan and to participate to the selection together with the other members of the Jury. It makes a huge difference as I could touch the works presented by the first selected artisans and artists.
I was very much impressed by the quality of their work and their imagination. Choosing was quite difficult!
As the project aims at increasing the knowledge of the contemporary 和文化 through the creative work of the artisans beyond Japan, I would suggest that they work more having in mind the usage that can be done of their product overseas.
Again, congratulations to the artisans and the artists and to the organizers of the 日本和文化グランプリ project.

審査委員 秋元梢 記

前回に引き続き審査員を務めさせていただきました。
2回目となる今回、私達審査員も、ただ審査をするだけではなく、良い物を選ぶ基準、意味、色んな課題があると気付かされた審査になった気がします。
一つ一つの作品に込められた思いを感じ、技術技法を知ることができて、感動しています。
より多くの人に日本の技術、文化の素晴らしさを知ってもらい、後世に残していくにはどうしたらいいか、まだまだ課題は沢山ありますが、ほんの少しでも、お力になれればと思い、この会に携わらせていただいています。

審査委員 秋元雄史 記

第二回目となった『和文化グランプリ』は、前年にも増して素晴らしい作品が集まった。
工芸素材や技の美を見せるだけでなく、それらを支える日本文化への理解や洞察、提案を含んだ作品が増したからだ。単なる工芸展にはない、「和文化」の再解釈や提案がなされて、うれしいのと同時に、コンクールの意義が明確になりつつあっていい方向に向いていると思う。私も昨年に続き、審査員の一人として審査に加わった。作品を通したさまざまな提案に、感動し、感心した。充実した時間であった。
各賞を受賞した皆さまにおめでとうと言いたい。

審査委員 上杉孝久 記

日常の中で使う道具にしても、思わず立ち止まらせるくらいの、野心的な作品が多かった。
私の専門分野である酒器でも、一見繊細な日本の四季を感じさせる、ガラスの盃なのだが、高台の裏の部分に螺鈿の装飾があり、向かい合って飲んでいる相手をも和ませる細工がされてある。このように自分だけでなく、相手を思いやる感性が、まさに「和文化」なのであろう。

審査委員 襟川文恵 記

「伝統・文化を育む土壌」とは、即ち「日常の暮らし」。応募作品の多くからは、まさに「日常の暮らしを伝統の技でリデザインする」という思いが伝わり、未来の担い手として頼もしく感じた。秀作揃いであったため、審査会は活発な議論の場となった。この時の議論は、和文化振興において大変意義深く、このグランプリは受賞作家と共にさらなる発展を遂げると確信するに至った。次回の応募作品との出逢いが、今から楽しみでならない。

審査委員 大倉源次郎 記

和文化グランプリに期待する。
このグランプリが大切にする心は勝ち負けよりも、これを手にする人の喜びと共に手にして使われることで和の世界が広がるかではないかと考えさせられました。
この心はあらゆる物事に通じ人の営みの基本ではなかろうか?昨年同様今年も大変刺激になる色々な分野の出品が揃い、総合藝術の能楽にも通じる素晴らしい事だと思います。
更なる発信を期待しております。

審査委員 片平秀貴 記

今回最終審査対象になった作品はみな、毎日の生活を愉しくし、和の知と技で新しい生活文化を生む可能性を孕んでいて大いに楽しめました。グランプリに輝いた「Chiritori × Houki」。見た目に美しい。
お掃除が愉しく生活の質が上がる。その結果、マイナス感のあった「お掃除」の文化的地位が上がる。
まさに世界への新しい「和文化」発信のいいお手本を見せていただきました。来年の審査が楽しみです。

審査委員 田中里沙 記

自然素材を選定する確かな目。熟練の技術。使う人への思い。形成された魅力的な作品からは、制作者の磨き抜かれた心と技、意思や人柄が伝わってきた。美しく、力強く、愛おしい作品たちは、日々の暮らしに新たな価値を与える存在になる。そっと触れたくなる、欲しくなる、使ってみたくなる佇まいに、間合いが縮まった。種類は多岐に渡り、審査は悩ましかったが、未来につながる数々のチャレンジとクリエイティブに賛辞を送りたい。

審査委員 長谷川祐子 記

和文化グランプリは、和文化を発展的に継承して新たな創造に発展させるクリエイションを見出し、フューチャーすることを目的としている。日常とむすびついた機能性と、美学や技巧とむすびついた意匠のバランスの問題は常にある。今回はこの二つの傾向について議論があったが、機能性はそれを用いる人の所作や場の空気をつくりだす環境の変容にむすびつく。美学や技巧の実験はマニエリズムとの境にありながら、創作の新しい可能性を刺激していく。いずれも重要な要素であり、これらのバランスと止揚が本賞の重要な役割と言える。

審査委員 堀越英嗣 記

第二回となる今回の審査で、和文化に対する様々な視点の作品に接し、伝統的和文化を現代の生活にどのように活かせるかということの大切さを改めて認識いたしました。
特に今回の応募作品から読み取れたことは、長く継承されてきた伝統芸術の追求から生まれる強い作品性の素晴らしさはもちろんですが、それ以上に作品を使っている時の優美な所作とそれが作り出す美しい風景、景色が大切な和文化であること思い起こさせて頂きました。