優秀賞|児玉理文 ・ 石川大樹

優秀賞/Excellent Award
受賞者 児玉理文 ・ 石川大樹
受賞作品 Floating Boat Counter ―舟のように浮かぶカウンターテーブル―

作品情報

社寺建築の組物として用いられる「舟肘木」をモチーフに、宮大工の技術を駆使して制作した、日々家族が集う場所―
キッチンとダイニングの境界に設えた、造り付けのカウンターテーブル。

舟肘木にみる普遍性―
組物の中で最も簡素で原始的だと考えられている「舟肘木」。船底型の曲面は力強い両腕のようにも、それこそ水面を切って進む軽やかな船首のようにも見える。その形は力の流れを美しく表現した、時代を経ても古びることのない普遍性を持っていると考えた。大きく持ち出したカウンターの構造をこの「舟肘木」をモチーフに伸びやかに形態化し、その名の通り水面に浮かぶ舟のような造形を実現した。

宮大工技術の応用―
計画にあたっては社寺建築の持つ木割・架構、そして製作にあたっては宮大工の持つ木取り・加工・組立の技術を応用した。各部寸法は木割と同様にモジュールの比で定め、宮大工の手で材料を吟味して仕口を施した。素材には桧の無垢材を用い、部材同士は組まれることでお互いの動きを拘束している。仕上げは手鉋で木材の美しい光沢を引き出し、厚みを魅せる面取り寸法にまで気を配ることで、素材の魅力を最大限に引き出した。

住空間との融合―
改修工事という制約のある中で、キッチンとダイニングの空間を一体にしつつ、その中心に家族の集う場所を作りたい― そのような問いからこのカウンターは生まれた。カウンターは壁から柱へ、そしてその先へ、「舟肘木」によって軽やかにかけ渡されて持ち出す。そうすることでキッチンから繋がる空間の連続性を引き立てながら、そこに家族の集う場所を生み出している。

Floating Boat Counter ―舟のように浮かぶカウンターテーブル―

Floating Boat Counter ―舟のように浮かぶカウンターテーブル―

Floating Boat Counter ―舟のように浮かぶカウンターテーブル―

Floating Boat Counter ―舟のように浮かぶカウンターテーブル―

プロフィール

児玉理文
一級建築士
東京工業大学工学部建築学科を卒業後、同大学院理工学研究科建築学専攻を修了。
在学中に一年間株式会社奥谷組にて研修し、共同制作者の宮大工、石川大樹氏に出会う。
その後安田アトリエでの勤務を経て、現在は吉田建築計画事務所に所属。
主に古民家の再生や住宅、木造施設の設計を手掛けている。

石川大樹
一級大工技能士/二級建築士
ものつくり大学技能工芸学部建設技能工芸学科を卒業後、株式会社奥谷組に入社。
宮大工として国宝の知恩院御影堂修復工事や北野天満宮など多数の文化財保存修理工事に携わる。
その後工匠常陸の立ち上げに参画し現在は独立。
社寺建築に限らず幅広く木造建築を手掛けている。

受賞者ホームページ : https://www.instagram.com/masfmiko/