2021年度受賞者

【総論】
受賞評価  審査委員長   三田村有純記

第1回の応募に実に多くの方、さまざまな作品群が集まりました。和文化はあらゆる分野にわたるために、出品していただく方もまた本グランプリを運営する側も、またまだ終息していない不安定な時期と重なり、手探りの状態が続いていました。ここに入選者と受賞者を発表できることを関係している皆様に深く感謝申しあげます。

受賞した作品は和の心を踏まえ、伝統の技法を自己のものとし、新しい表現を模索したもので、実に頼もしく思っています。日本の未来が溢れているこれらの作品は世界へと、新たな日本の和文化の発信となるものです。

伝統を踏まえて創新している作品を皆様に見ていただきたく思います。

グランプリ/Grand Prix

【受賞者】 中川木工芸比良工房 中川周士 鈴木大樹 斎藤皇輝 大原弘也 亘章吾
【受賞作品】 「Wave」シリーズ  「YORISHIRO」シリーズ
【受賞評価】杉の木が育つ時の自然な造形をそのまま器にする感性と技術的な力量が生み出した本作は、審査会場において圧倒的なオーラを放っていた。今までの桶を作る技術とは全く違うコンセプトで新しい造形美を生み出したことは、日本の工芸力の底力でもある。正円ではない揺らぎを持つ二種類の表現展開を発表しているが、いずれも姿と佇まいが美しく、第1回目となる展覧会のグランプリとして実にふさわしい秀作である。

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準グランプリ/Semi-grand Prix

【受賞者】 紫舟アトリエ 紫舟
【受賞作品】 書のキュビズム 「自然体」
【受賞評価】書を立体にする。この作家は長きにわたりこの独自の表現に取り組み、国内外で活躍をし、多くの成果を挙げている。今回出品された作品はその中の一作である。書は紙、布、板などに墨を持って書く平面芸術であるが、元は骨や亀の甲羅、石、金属などに彫りを入れたもので立体芸術なのである。字を読まずとも空間そのものが美しく存在する本作は最後までグランプリを争った優作である。 
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優秀賞/ Excellent Award

【受賞者】 有限会社綵巧 室門耕一郎
【受賞作品】 京くみひも 三軸組織 「孔雀皇貴」

【受賞評価】 正倉院に伝わる組帯は「唐組平緒」日本最後の帯であり、その技法と美意識を現代に展開した本作は、気品高く、美しい。八寸の名古屋帯用の大型の機械を駆使して、工芸技術を現代に合わせ、発展させているのは素晴らしい。色のグラデーションを考えて組み上げられた本作は、美の本質とは何かを提案している。

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優秀賞/ Excellent Award

【受賞者】 株式会社土佐組子 代表取締役 岩本大輔
【受賞作品】 組子耐力壁
【受賞評価】 釘を使わずに削られた棒材を組み合わせる伝統的な組子技法を使い、建築の壁に構造的な提案をしているところが高く評価された。この骨組みで作り上げられた壁面は格子の模様を新鮮な表現とし、開放的で現代的な空間美を作り上げている。自然素材の木を用いて、伝統的な技術を未来への提案としているところが素晴らしい。
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優秀賞/ Excellent Award

【受賞者】 樽田裕史
【受賞作品】 ゆらぎ
【受賞評価】 本作はとにかく美しい。蛍手という中国明時代の技法本来は小さな丸い穴を開けるだけなのだが、薄く轆轤成型した器に大きく弧を描くようにスリットで穴を開けるのは困難な技である。そこに透明釉を充填させて、器を完成させている。形も自分の中で昇華したもので、青白磁釉に光が差し込む造形は実に見事である
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優秀賞/ Excellent Award

【受賞者】 青木伸介
【受賞作品】 湛える
【受賞評価】 乾漆技法で作られた器はゆったりとした造形美を持ち、おおらかである。

本作は内側を黒漆で塗り重ねた艶と、外側の和紙肌との対比が、見るものに大きな感動を与える。和紙は広島の大竹和紙であり、その荒い肌に漆を染み込ませるように何度も塗り重ねている。自然な繊維の凹凸が優しい光となり、使うたびに美しさを増す作品である
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特別賞/Special Award

【受賞者】 凛九
【受賞作品】 東海女性若手職人グループ凛九
【受賞評価】 今回の展覧会では考えていなかった応募内容だが、その取り組みに夢があり、9人の個性が絡み合って大きく発展をしている姿に、審査員一同何らかの形で評価をしたいということで、特別賞とした。若い女性が伝統の技の世界に踏み込み、技法を受け継ぎ、女性の視点で創作し、未来へ引き継ごうとしていることは頼もしい。これまでの様々な場面での発表活動が高く評価をされていること、今後に期待することが大である。
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学生賞/ Excellent Student Award

【受賞者】 野村涼平
【受賞作品】 KOZAI
【受賞評価】 京都の町屋は年間多くが壊されその廃材の量が夥しく、焼却処分されてしまうことに心を痛めた作者は、廃材となった木材を使い額縁や家具にすることを展開している。それを新しくなった建築空間にまた飾ることで、その素材が時空を超えて生きていくのである。サイズも素材も何もかも違うものを合わせ、そこに炎を当てる焼き杉技法などにより作られた姿には、時代を超えた神々しさを感じる。
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