| 賞 | 優秀賞/Excellent Award |
| 受賞者 | 松江藩籐細工 八代 川口 淳平(かわぐち じゅんぺい) |
| 工芸・美術部門/竹・籐・藤 | 籐花結び編み籠バッグ街猫 |
作品情報
籐花結び編み籠バッグ街猫
サイズ… W250 D190 H230
素材… 籐
技法… 花結び編み
伝統と未来について私が扱う籐(ラタン)という植物は日本に自生していない素材なので、伝統として制作する者が少ないです。伝統として作られている形としては、直径30cm高さ10cmほどの丸い籠です。インドネシアの一部でしか取れない貴重な素材を使い、長い時間を掛けて作られる籠は、日本に自生する竹を使った籠と比べるととても高価格になります。日本での伝統が始まった江戸時代に茶道の道具として使われた籠は、現代の生活様式では用途が限られます。
私はその伝統で受け継がれている籠の制作技術はそのままで、編み方の構成や、大きさを変えて籠を編みました。その籠に革の持ち手と内袋を取り付けて、バッグや茶籠として使って頂けるように仕立てました。バッグや茶籠は現代の生活様式にも合いますし、部屋に置いて頂き、インテリアの一部として楽しんで頂く事が出来ます。籐という素材は普段使いでご使用頂いて100年使って頂けます。バッグや茶籠としてご使用にならない所有者に渡る事も想定して、持ち手と内袋を取り除いて頂けると籐籠のみでご使用頂ける様に、持ち手や内袋を取り付ける際に穴を開けず編み目の隙間を使って取り付けております。また、底部分は擦れなどで傷みやすいので、交換をする事を考えた作りになっています。

審査委員の講評
秋元梢(モデル)
私が和文化グランプリの審査において重視しているのは、伝統的な素材や技法が用いられているかということだけではありません。そこに現代の感性がどのように加えられ、今日の暮らしの中で新たな価値として成立しているかという点にも注目しています。
本作品は、籐という伝統的な素材と編みの技術を基盤としながら、その魅力を現代的な造形へと昇華させた点に高い評価を与えたい作品です。
異なる太さの籐を組み合わせた繊細な編みは、素材そのものの表情を引き出しながら、小花を思わせるような軽やかで愛らしい意匠を生み出しています。さらに、持ち手に革を用いることで、籐の持つ素朴さや温かみを残しながら、洗練された佇まいへと導いています。
特に評価したいのは、伝統的な技法をそのまま踏襲するのではなく、現代の生活やファッションに自然に取り入れられるものとして再構築している点です。
持ち手や内袋を取り外すことができ、用途や装いに応じて使い分けられるという機能的な工夫も、単なる装飾性にとどまらない本作品の完成度を高めています。伝統技術による確かな手仕事と、現代の生活者が求める実用性。その双方を無理なく一つの作品の中に成立させている点は、特筆すべきでしょう。
伝統工芸において重要なのは、過去の技術を忠実に保存することだけではなく、その技術が時代を越えて受け継がれていくための新しい形を提示することだと考えます。
伝統を守ることと、伝統を更新すること。その二つは相反するものではなく、むしろ両者が共存してこそ、文化は次の時代へと継承されていくのではないでしょうか。
本作品は、素材、技法、造形、機能性のそれぞれにおいて伝統と現代性の接点を丁寧に見出しており、工芸品としての価値に加えて、現代の暮らしの中で使われることによってさらに魅力を増す作品だと評価しました。
伝統的な手仕事の価値を損なうことなく、現代の感性と生活へと開いていく。その姿勢こそ、これからの和文化を考える上で重要な視点であると感じます。
その点において、本作品は和文化の継承と発展の可能性を示す、非常に意義深い作品であると評価します。
プロフィール
松江藩籐細工 八代 川口 淳平(かわぐち じゅんぺい)

<川口 淳平 略歴>
1978年:石川県金沢市生まれ 広島県広島市に移住
1998年:革鞄と革小物の制作開始
2001年:妻の郷里 鳥取県に移住
2009年:松江藩籐細工 六代長崎誠 に弟子入り
2014年:八代を継承
2023年:第98回国展工芸部奨励賞を受賞
2024年:鳥取県伝統工芸士に認定
2025年:2025金沢・世界工芸コンペティションにて大賞を受賞
2026年:第100回国展にて新人賞を受賞
籐の産地インドネシア・カリマンタン島を調査
イタリアヴェネチア・HOMO FABER2026に出品
◆受賞コメント
この度は受賞をさせて頂き、私を含め松江藩籐細工歴代がたくさんの方に知って頂ける機会を頂けた事を喜んでいます。
◆受賞者ホームページ
HP:www.mint-chu-chu.com
Instagram:https://www.instagram.com/mintchuchuleather/



