| 賞 | 特別賞/Special Award |
| 受賞者 | 有限会社浅田漆器工芸 代表取締役 浅田明彦(あさだ はるひこ) |
| 工芸・美術部門/金工 | 夜の明かり |
作品情報
夜の明かり
「夜の明かり」は夜の街の窓からこぼれる光、空から雪が降ってきた様子を山中漆器の塗装の技術で表現した器のシリーズです。金色を「街の明かり」、銀色を「雪の明かり」と名づけ、単なる色としてでなく、その色から感じられる情景を器の中に写し取っています。
この作品は偶然から生まれました。通常では器の一部を金色一色で仕上げる予定でした。しかし塗装を進める途中、黒から金へと少しずつ移り変わっていく状態を見たとき思わず手が止まりました。奥行きを感じるその曖昧な色合いがどこかで見た景色に見えたからです。
艶感も変えることで、それぞれの黒の雰囲気を変え、料理や飲み物の色を一層引き立たせられる仕上げ方にもこだわっています。

雪の明かり

街の明かり
審査委員の講評
秋元梢(モデル)
「雪の明かり」は、漆という日本の伝統的な素材と技法を基盤に、現代の暮らしの中に新たな美のあり方を提示した作品です。
黒い漆の深い陰影と、そこに揺らぐように施された銀の表情によって、雪明かりや月光のような、かすかな光の気配を感じさせます。
私が特に惹かれたのは、陰と陽、光と影という、一見相反するものが互いの存在によって成立している点です。光があるからこそ影が生まれ、影があるからこそ光の存在が際立つ。そのどちらか一方では成立しない関係性には、移ろいやすく、どこか儚い美しさがあります。
また、本作には日本文化に通じる「慎ましく、あえてすべてを見せない美学」が感じられます。強く主張することで存在感を示すのではなく、静かに佇み、周囲の空間や使う人の感性にそっと寄り添う。そして、自らを際立たせるのではなく、そこに置かれるものや、その場の空気の魅力を引き出していく。その控えめな在り方こそが、本作の大きな魅力だと思います。
さらに、伝統的な漆の技法を踏襲するだけではなく、現代的な感性によって再解釈し、鑑賞するための作品と日常の器との境界を自然に溶かしている点も評価したいです。手に取り、使い、眺めるという日常の行為そのものが作品との対話となり、「用の美」を現代的に表現できているのではないでしょうか。
実用性を備えながらも、素材や技法、コンセプトによって特別な存在感を持つため、自らの暮らしを豊かにする器としてだけでなく、大切な人へ贈る特別なアイテムにもなるのではないでしょうか。
伝統を保存するだけではなく、伝統の中にある美意識を現代の生活へとつなぎ直し、静かな光と陰影を日常の中に届ける。そこに本作の価値と、現代工芸としての可能性を感じました。
プロフィール
有限会社浅田漆器工芸 代表取締役 浅田明彦(あさだ はるひこ)

有限会社浅田漆器工芸 浅田明彦(代表取締役/ 塗師)
1988年、石川県生まれ。有限会社浅田漆器工芸 代表取締役、四代目。
京都伝統工芸大学校で漆芸を学び、卒業後は石川県立山中漆器産業技術センターで木地や漆器づくりの基礎を学ぶ。
2010年に浅田漆器工芸へ入社し、商品開発や製造、販売に携わる。
山中漆器の伝統技術を受け継ぎながら、現代の暮らしや感性に寄り添う漆器を提案。
「うつろい」や「夜の明かり」など、漆の質感と現代的な色彩表現を組み合わせた作品を手がけている。
2019年グッドデザイン賞、2020年全国伝統的工芸品公募展 内閣総理大臣賞など受賞。
◆受賞者コメント
このたびは栄えある賞をいただき、大変光栄に思います。私たちの工房がある石川県加賀市・山中温泉は、山や川など豊かな自然に囲まれた場所です。そんな環境で暮らす私たちにとって、都会の夜に広がる無数の明かりは、どこか憧れを感じる景色でもありました。
「夜の明かり」は、その光景を塗装によるグラデーションによって器に写し取ったシリーズです。山中漆器の受け継がれてきた技術を大切にしながら、今を生きる私たちが心を動かされた景色を表現する。今回の受賞を励みに、これからも新しい漆器の可能性を探っていきたいと思います。
◆受賞者ホームページ・SNS
HP:https://asada-shikki.com
Instagram:https://www.instagram.com/asada_shikki1976/