2026 学生最優秀賞|東京藝術大学大学院 文化財保存学専攻 保存修復研究分野 修士1年 白石 真子

賞 学生最優秀賞/Best student Award
受賞者 東京藝術大学大学院 文化財保存学専攻 保存修復研究分野 修士1年 白石 真子(しらいし まこ)
工芸・美術部門/漆 乾漆蒔絵螺鈿水指「すえひろがり」

作品情報

乾漆蒔絵螺鈿水指「すえひろがり」

サイズ… W 170mm D 170mm H 120mm
素材… 漆、麻布、白蝶貝、アワビ貝、銀粉、ケヤキ
技法… 乾漆、螺鈿、研出し蒔絵、平蒔絵、高蒔絵、旋盤

古典を大切にしながらも今らしい「かわいい」デザインを というテーマで制作していました。 作品は扇をモチーフにした水指で、前面には葡萄とリスの扇、裏面には苺と蜂の扇が配置されており、春と秋どちらの季節でも茶室で使用 することができます。 日本には「雲錦模様」と呼ばれる、春の桜と秋の紅葉を一つの意匠にした模様があります。それを今の時代ならどのような模様にするだろ かと考え始め作品を制作しました。 作品は水指を運びやすいよう手になじむ形にこだわり、軽い乾漆技法で制作しております。螺鈿は伏彩色という技法で貝の裏から銀粉や色粉で 柔らかな風合いを目指しました。また扇面の中を蜂やリスが飛び回る様子を高蒔絵で表現し、蓋はケヤキ材を旋盤で加工し制作しています。

GP6学生最優秀賞

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審査委員の講評

大倉源次郎(能楽小鼓方大倉流十六世宗家)

扇面蒔絵 春と秋 葡萄とリス 苺と蜂
自然と人工美の二元対比
扇面という人工物の中に描かれた具象的な自然の春の苺と蜜蜂、と秋の葡萄とリスが室町以降の二元対比のテーマに沿って描かれ
現代のカワイイという要素が品良く収まった所を高く評価しました。
葡萄(武道)とリス(律す)は武家社会の子孫繁栄と掟に生きる姿を表します。
苺と蜜蜂は今までになかった取り合わせかと思いますが、現代的な解釈を入れるならば一期に集まる働き者たちの楽しみの世界と読み取れます。
リスも蜜蜂もカワイイ地を走る獣と空を翔る翼(羽)で掟と自由の象徴でも有ります。
扇面はもちろん末広がりでめでたさを象徴しています。

工藝美術の世界に求められる技術と心(哲学)の時代による変化を、日本の歴史の中で若い感性を以て深化させ得ることが可能なのか?の希望が持てる作品。
伝統文化の世界では絶えず伝統的な技と心の成熟がその時代時代に於いて試されているといえます。
安土桃山には安土桃山の、元禄には元禄の明治には明治の、そして令和には令和の感性のなかで積み重ねられた途方もない挑戦と失敗の上に立ち続ける覚悟が伝統文化に従属する者たちには必要です。
それだけに仕事を超えた神仏への奉仕としての価値のある呪縛があります。
それを乗り越える鍵が作品から発せられる詩歌の世界といえます。
彼女の瑞々しい作品には漆工藝の様々な技法への素直な取り組みと成熟。
蒔絵のテーマに心を寄せて春秋の季節を問わずに使ってみたいと思わせる人に期待を起こさせる、心へ語りかける詩歌の世界が見られる所に魅力が有り、茶会席でこの水指が使われた時には、話題に笑顔が生まれる瞬間が待ち遠しい作品の力を感じます。
未来への可能性のあるメッセージを読み取らせて頂きました。

プロフィール

東京藝術大学大学院 文化財保存学専攻 保存修復研究分野 修士1年 白石真子(しらいし まこ)

GP6学生最優秀賞
2024 年 東京藝術大学 美術学部工芸科  卒業
2026 年 東京藝術大学 大学院漆芸専攻  修了
現在  東京藝術大学 大学院文化財保存学専攻 保存修復 修士1年

2023 年 安宅賞
2024 年 漆工奨学賞
第四回日本和文化グランプリ 入賞
2025 年 第五回日本和文化グランプリ 優秀賞
ポケモン・ウィズ・ユー奨学金  受賞

◆受賞コメント
日本の意匠には意味が込められています。
その意味を借り、現代らしい曲線(”かわいい“線)でとらえて作品を制作しました。
そのような作品で賞をいただき大変光栄に感じるとともに、今後の制作の励みになりました。
引き続き精進してまいります。

◆受賞者ホームページ・SNS
Instagram:@makoshiraishi_