優秀賞|岸野 田

優秀賞/Excellent Award  
受賞者 御表具 田 岸野 田
受賞作品 白井晟一書 「帰依」 表具

作品情報

白井晟一書 「帰依」 表具

素材 :
南米産泥染布、銀欄(作品周りの筋)
美濃紙、美栖紙、宇陀紙
金物軸先

形態 : 掛け軸(袋表具)

「表具」という、昨今では日本人にさえ馴染みの減った言葉かと思います。その表具に、このような賞をいただけたことをとても嬉しく感じております。

「表具」とは、掛け軸、屏風、額装などを仕立てることを言い、掛け軸一幅を作るとき表具師ひとりではどうにもなりません。

裂地、和紙、軸先、金具など、全てそれぞれの職人の方々の作った材料があってこそ掛け軸を作ることができ、どれが欠けても作れなくなります。

近年、和紙の漉き手をはじめとした職人の方々は減り、表具師もまた減少傾向にあります。

今回の作品で、表具は自由であることが伝わればと思っています。表具を多くの方に改めて知ってもらうことで、材料を作ってくれている方々へのひとつの応援に繋がれば幸いです。

 

審査委員の講評

上杉 孝久 (上杉子爵家九代目当主)

書画の周りを裂地から切り取り、継ぎ足す事により、1種類の裂地でおおわれているように見せている。デザインは簡素だし、さらに風帯がないので、その分白井先生の字を引き立てている。 裂地も南米の泥染を使用することにより、「帰依」の意味をさらに深める素朴さが、何よりも良い。 軸先もこの裂地ならば、紫檀か黒檀、あるいは溜塗を使いたくなるところを、敢えて金物を使用するなど、作品を深く理解した表具に感心した。 床の間がない家が多くなった現代、掛け軸を掛ける機会も少なくなっている。しかしこの掛け軸ならば、床の間がない洋間でも何の違和感もないだろうか。 まさにこれからの和文化を象徴するような作品だと好感を持った。

表具師プロフィール

御表具 田 岸野 田(きしの でん)

1984年生まれ、東京都出身、大東文化大学書道学科中退
2007年から静岡県、奈良県、長野県にて修業
2013年 安曇野に工房「御表具 田」を開く
2014年 安曇野 高橋節郎記念美術館にて表具個展を開催(同2016・2018年)
2017年 浄土宗周岳山法蔵寺「二河白道 釈迦三尊像 後背壁画」下地制作
2019年 神楽坂 白日居にて「現代の表具展」
2021年 目黒 八雲茶寮にて 「ひとうたの茶席」展
2023年 神楽坂 白日居「短冊と、くらす」展

現在、WEB連載「ひとうたの茶席」をはじめ、雑誌連載、大学などで表具についての講演も行う。 

 

受賞者ホームページ
http://on-hyougu-den.com/sp/