優秀賞|安川万里子

優秀賞/Excellent Award  
受賞者 安川 万里子
受賞作品 纏い

作品情報

纏い

素材:磁器土、下絵具、釉薬、上絵具

伝統技法「いっちん」を施した磁器の彩色作品。

「いっちん」とは、細い先金をつけたスポイト型の道具から泥漿にした土を絞り出して描く技法である。

本作品は丸や三角、四角を一定の法則で配列している。

轆轤成形した器の全体に隙間なくいっちん技法を施す事で、器が装飾物を纏ったかのような仕上がりを目指した。

「纏い」は刻み込まれた記憶や祈りを身に纏い、編み直し、知らず知らずに連なって行く世界を表現している。

彩色は淡く、そこから見る人々の記憶や祈りが呼び起こされたら嬉しいと思う。

審査委員の講評

リシャール・コラス (シャネル合同会社 会長)

茶道に特別な魅力を感じており、私たちが住む鎌倉に茶室があるため、陶芸に特に興味があります。そのため、私は「纏い」という広がりのある器を選ばれる事になりました。この作品には、アーティストの技術のレベルはもちろんのこと、さらに詩的な要素が感じられます。粘土で造られたこのボウルは、複雑な模様のおかげで編まれたような印象を受けます。最も広い周囲にはハチの巣模様があり、それに続いて垂直な線の開放的な模様が続きます。三つの円形のフレスコが続き、再び同じ編み目がボウルの底部に続き、静かな水のような色のクレーターに至ります。器の表面の色も繊細で、ややピンク色のカオリンの後に微妙な青が続きます。また、このオブジェクトの優雅な形状も高く評価しました。完璧で官能的な円錐形です。

陶芸家プロフィール

安川 万里子

2003 沖縄県立芸術大学大学院陶磁器専修修了、同大学教育補助嘱託員
2005 同大学非常勤講師を経て、東京都陶芸工房3rd point古屋眞理子氏のもとで作陶
2021独立 国内で展覧会を多数行う

受賞コメント
この度は優秀賞を頂き、大変光栄に思っております。陶芸の伝統技法を独特な文様と色彩で表現し、お手に取ってくださる方々の記憶や感情が呼び起こされるような作品を作りたいと日々取り組んでいます。伝統文化は作り手の修練と使う人々一人一人の想いが連なって大きく形を成して行くものと考えています。連なる一部分になれる様、一層の努力をして参ります。本当にありがとうございました。