準グランプリ|田泉夏実

準グランプリ/Semi-grand prix
受賞者 田泉 夏実  
受賞作品 Cirrus Cloud  

作品情報

Cirrus Cloud

サイズ…Cirrus Cloud 1 (54×18×3cm) / Cirrus Cloud 2 (49×16×3cm) / Cirrus Cloud 3 (25×5×3cm)
素材…漆、和紙、金粉

地球の引力が及ぶ限界に最も近い上空に発生する巻雲の姿に物理的な気象現象の面白さと自然への畏敬と感じその印象を形にした。乾漆の胎の素材は和紙と漆で、一つの作品の部分はすべて3cm厚の中に一体で制作されている。表は黒漆の磨き上げで巻雲のシャープさを表現し内側を金としてはるか上空の異世界の深遠さを表現した。

審査委員の講評

大倉 源次郎 (能楽小鼓方大倉流十六世宗家)

マンション、戸建などの日本建築から『和』の空間が絶えて久しい。 床の間の消失からそれに付随した雲板、違棚、欄間、畳、 あらゆるものが消えていく喪失感は生活文化の変質とともに高まる。 日本家屋には四季折々の素材や造形が住む人の感性を養っていたはずで 今流行りの風水の流れが絶えず意識された空間であった。 風に流れる雲はまさしく風水の表象。 それを意識して飾ることで氣の流れを感じ 自分自身が動物として自然の世界の中で生きていることを 忘れない為にも飾られるべき材質と造形だと感じました。 例え一つの雲でも住まいの中にあることで風水の『和』を感じる逸品です。

 

乾漆造形作家プロフィール

田泉 夏実

東京藝術大学にて脱活乾漆技法と出会って以来、乾漆ならではの構造と、滑らかで変化に富んだ曲線と曲面の構成による造形を模索している。注ぐことをテーマとした器から煎茶道における水注の制作など経て近年は器物としての用途を持たないオブジェ作品の制作を中心に展開している。

◆入選・受賞歴
国際漆展(特別賞)、日本煎茶工芸展(日本煎茶工芸協会会長賞)、そば猪口アート展(審査員賞)他受賞。日本文化財漆協会常任理事

受賞者ホームページ

作品集
https://www.behance.net/gallery/98694295/bloom-TAIDZUMI-Natzumi-kanshitsu-artworks

Instagram
https://www.instagram.com/natzumi_chand_studio

受賞コメント
この度はこのような大きな賞を授かりまして大変光栄に存じております。日々のささやかな物事の取捨選択において無意識に働く価値観や美意識の繰り返しが文化を形作っているのではないかと考えております。これからも和文化とは何かと自らに問いかけながら、自然を味わい日本らしいまろやかな遊び心を持ちつつ、風土に根差した持続可能な素材を用いて制作するクリエーターとして、この賞に恥じぬよう美しさの提案を模索してまいりたいと存じます。この度はまことにありがとうございました。