賞 | 優秀賞/Excellent Award |
受賞者 | 佐野圭亮 |
受賞作品 | 彩貝螺鈿耳飾り「美々華」 |
作品情報
彩貝螺鈿耳飾り「美々華」
サイズ…W11 D14 H11(mm)
素材…漆、貝、金、銀
漆や螺鈿といった日本の伝統によって培われた技の美を現代的な形で生活に溶け込ませることを目的に作りました。
審査委員の講評
富川匡子(株式会社emu(エミュ) 代表取締役社長)
漆黒のなかに煌めく鮑貝。その虹色の光が耳元で、ある時は息を潜め、ある時は輝きを放つ……。
エジプト初期王朝の時代より、シルクロードをつたって日本に伝来した螺鈿の美を、現代に活きる“おしゃれ”として体現した「美々華」は、漆細工の次なる展開を予見させる。
螺鈿とは、夜光貝や鮑貝、蝶貝の内側を極薄い板状にし、カットしたものを木地に貼り、上から漆を塗って研ぎだす技法。正倉院御物の「螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんのごげんびわ」は周知の通り、宇治平等院の天蓋や春日大社に奉納される刀剣にも用いられている日本の伝統工芸において欠かせない技法だ。
しかし、いま、その技法は“私たちの日常”から遠く離れたものになってしまったのではないだろうか。
彩貝螺鈿耳飾り「美々華」は、そんな螺鈿の技法と美を、現代のライフスタイルに取り戻そうと試みている。壮大なものでも、有難いと拝むものでもなく、身近な、小さな、“私たちの日常”に寄り添うものとして。かつ、先人が伝えてきた漆細工の魅力を余すところなく伝えるものとして。
1㎝にも至らない立方体のピアスには、表面と側面に繊細な螺鈿細工が施されている。裏面は梨地細工。ここも“憎い”ポイントだ。漆芸の奥深さと美を極小の世界に閉じ込めている。
「黄昏」「春暁」といった銘がつけられた耳飾りは、文字通り、オレンジやピンクの色相を取り込み、色貝の多様性も表現されている。
聞くところによると、「美々華」はピアスだけでなく、タイピンやカフスにも取り換えが可能だとか。白檀を用いた匂仕掛の桐箱に収められており、ギフトとしても最適だ。伝統工芸の技を身近に感じられるアイテムとして、さらなる広まりを期待したい。
プロフィール
佐野圭亮
1994 群馬県高崎市生まれ
2017 東京芸術大学美術学部工芸科卒業、同大学大学院入学
2020 同大学大学院修了
2020~ 群馬県高崎市を拠点に制作活動を開始、都内の百貨店やギャラリーを中心に作品を発表、現在に至る。
◆受賞者ホームページ
keisukesano.com
◆受賞コメント
この度は優秀賞に御選出いただき誠に感謝申し上げます。時間のかかる一点ものの作品を制作する傍ら、反動のように日本の伝統美をよりカジュアルな形で生活に実装したいという思いが高まっていきました。漆芸における創作は私の理想を作品として形にする為の極めて個人的な営みでありますが一方で先人たちが伝えてくださった我が国日本の重要な資源でもあります。そのような思いからアクセサリーという普段とは異なるフィールドで作品制作に挑戦しました。