準グランプリ|山本一惠

準グランプリ/Semi-grand prix
受賞者 山本一惠
受賞作品 紙神からの贈りもの「越前和紙縁起飾り」-七宝-

作品情報

紙神からの贈りもの「越前和紙縁起飾り」-七宝-

サイズ…W370 D85 H775(mm)
素材…細工:越前和紙(国の重要無形文化財 岩野市兵衛氏「越前生漉き奉書」)
箱:桐、越前和紙(襖・壁紙)

日本では、古来より、「白い紙は神に通じる」万物を清めるものとされ、神仏に祈りを捧げる神聖な行事や、日々の暮らしのなかで用いられてきました。
この白い縁起飾りは、1500年の歴史をもち、「紙の神様」を祀る越前和紙の里で、伝統の技を今も漉き継ぐ国の重要無形文化財(人間国宝)岩野市兵衛氏の「越前生漉き奉書」の貴重な端紙を用いて仕立てたものです。
端紙は、断裁工程の際に切り出されるものであり、通常は水に溶かして原料に戻されるため、儚くもその姿は失われてしまいます。この様々な長さや太さの細長い端紙素材に、巻く、たわめる、締める、撚る、束ねるなど、人の手先の力を加えることで、四角い紙面のままでは見えない、強く、しなやかで、ふくよかな和紙素材の力と輪郭を見出すことができます。
越前和紙産地が得意とする意匠性のある襖・壁紙を背景に施した「蓋付きの箱飾り」として仕立てることで、「贈る」「飾る」「仕舞う」という一連の行為を軽やかにし、様々な国のシーンやスペースで、気軽に日本の和文化に親しんで頂けます。
「紙神からの贈りもの」は、日本伝統の吉祥文様をモチーフに、今の暮らしに通じる幸せなカタチを贈ります。

第4回日本和文化グランプリ 準グランプリ受賞

  • 第4回日本和文化グランプリ 準グランプリ受賞
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審査委員の講評

秋元雄史(東京藝術大学名誉教授 美術評論家)

越前地方は和紙の一大生産地である。そして同時に、そこで生み出される和紙は古くから変わらない高いクオリティを維持している。中でも際立つのが伝統の技を今に受け継ぐ国の重要無形文化財(人間国宝)の岩野市兵衛さんである。丁寧な制作から生まれる市兵衛さんの越前和紙は、一際高いクオリティを保っている。
今回の受賞作である「紙神からの贈りもの『越前和紙縁起飾りー七宝―』」は、その市兵衛さんのつくる和紙の製造過程で生まれる端紙を活用して、通常の紙のあり方とは異なるアプローチで立体作品にしたもの。普通、端紙は水に溶かして原料に戻される。細長く切り出された様々な長さや太さの紙を束ね、巻き、締めるなどして、飾りへと変わる。通常の平面状の紙からでは感じられない表情を浮かべる。紙の柔らかさやふくよかさ、強さがそのまま作品を特徴づける。作品「七宝」では、「繁栄」「人の縁」「調和」などを表現する吉祥文様である七宝紋を連続紋様として束ねられた紙の上に添えられている。和紙の白さを活かして白一色の姿だが、どこかに気品と華やかさが同居する飾りになっている。
越前和紙は、紙の強さと美しさから古くは公文書用として、あるいは祝詞などの神事などにも使われてきた。和紙としての美しさと縁起物として使用される越前和紙の特徴を活かして、これまでの縁起飾りから一歩踏み込んで生まれたのが今回の「飾り」だろう。伝統的な製法を今に伝える和紙の素晴らしさに加えて、現代版の縁起物としての可能性を感じる作品である。

 

プロフィール

山本一惠

山本一惠

福井県生まれ。長年、福井県の地場産業のものづくり支援に携わるなかで、越前和紙や漆器をはじめとする伝統工芸の素材や技法等に興味と知見をもつ。数年前よりライフワークとして、ペーパークイリング(紙を巻き、装飾する技法)等の紙細工・加工の技法を習得。洋紙ではなく、越前和紙のみを用いた創作に取り組む。国の重要無形文化財(人間国宝)岩野市兵衛氏ご家族とのご縁を頂き、「越前生漉き奉書」の端紙を用いた作品づくりをはじめ、産地職人の方々との交流を深めている。
2024年 越前和紙の里 紙の文化博物館主催展示会「越前和紙縁起細工「神紙からの贈りもの」2024」
2023年 大瀧神社・岡太神社 十一面観音菩薩」縁起飾り奉納
2021年 越前和紙の里 紙の文化博物館主催展示会「神紙からの贈りもの」

◆入選・受賞歴
アロマ&ハーブクラフトコンテスト(グランプリ)、4×6 Compact Art Competition(入選)、AJCクリーターズコレクション(佳作)

受賞者ホームページ
Instagram
https://www.instagram.com/office_miyabie/

受賞コメント
栄えある賞を頂き、大変光栄です。審査員の方々、そして、いつも素敵なご縁と学びを授けて下さる恩師や産地の皆様、友人、家族に心より感謝いたします。この賞は、紙の神様からの贈りものではないか?と感じております。これからも、日々の丁寧なくらしと、人々とのご縁を大切にし、越前和紙をはじめとする伝統工芸と和文化の素晴らしさを伝える活動を楽しんでいきたいと思っております。有難うございました。