2025優秀賞|株式会社 清華堂 4代目 岡本諭志

優秀賞/Excellent Award  
受賞者 株式会社 清華堂 4代目 岡本諭志
工芸・美術部門/和紙 和紙のレリーフ

作品情報

和紙のレリーフ

サイズ…W300 D150 H24(mm)
素材…宇陀和紙

【和菓子木型を再活用した和紙のアートパネル】
表装の仕事に携わり、和紙の柔らかさの可能性を感じてきました。
一方和紙は乾燥後に剝がしやすい利点もあります。
これらの特徴を活かし、立体物の型取りを試みました。
落雁などの和菓子木型は、今や職人不足から骨董市に並んでいます。
この造形を遺していくことも表具の仕事と捉え直し、表具文化である客人へのおもてなしを想起させるような吉祥柄の木型を蒐集しました。
過去の文化遺産と繋がってできる1枚物の和紙アートとして、現代の空間に馴染み伝わっていくことを願って製作しました。

GP5優秀賞

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審査委員の講評

富川匡子(株式会社emu(エミュ) 代表取締役社長)

日本古来の落雁や干菓子、練り切りなどに用いる菓子木型を活用し、和紙を用いたアートパネルに昇華させた作品。木型に一枚の和紙を裏打ちし、刷毛で水分と糖分を密着させて、乾燥、型抜きするようにはがして仕立てている。用いるのは、奈良吉野産の手漉きの宇陀紙。楮を原料とし、白(はく)土(ど)を混ぜて漉いた宇陀紙は、強度と柔軟性を兼ね備え、表具裏打ち用の和紙として用いられてきた。表具師である作者ならではの素材の選択であろう。
 用いられる菓子木型は、後継者不足により、新しいものが作れなくなっている。作家は、その造形を遺していくため、骨董市を回り、吉祥模様の木型を中心に蒐集。当時の木型職人の繊細な彫りから、その高い技術力がうかがえるという。
 作品は純白の和紙無地と、味わいのある茶色の柿渋塗の2色展開。同じ松の木型でも、色によってまったく異なる表情を見せる。木製パネルに嵌め込まれた作品は、すっきりとモダンで、現代空間によく似合う。
 菓子木型と和紙の歴史の変遷、吉祥模様に込められた祝いの気持ち、表具文化としてのおもてなしの心が、和紙のアートパネルとしてよみがえった本作。さまざまな想いが込められた和紙アートは、ギフトとしてもおすすめしたい。

 

プロフィール

株式会社 清華堂 4代目 岡本諭志

GP5優秀賞1986年大阪生まれ
慶応義塾大学大学院政策メディア研究化修了
大工を内製化する株式会社平成建設に設計士として入社後、株式会社清華堂4代目を承継
受賞者ホームページ
HP:https://store.seikadou.com/
Instagram:https://www.instagram.com/seikadoustore
受賞コメント
掛け軸・屏風・襖など私が関わる表具業界は、日本のライフスタイルの変化によって必要性を日々問われています。良い物を作ろうと思っても、材料が手に入らない。よくある話です。一人の個人、一つの会社、一つの産業ではその構造を守っていけません。和文化圏の技術者が振興し、今一度、和文化の魅力を伝えるべく発信する意義に心より共感します。
日本和文化グランプリにて優秀賞を賜り、大変光栄に存じます。