| 賞 | 優秀賞/Excellent Award |
| 受賞者 | 兵庫県立宝塚北高等学校 グローバルサイエンス科 3年 小田直弥・奥野泰生・佐藤友哉・太田凌輔 |
| ライフスタイル部門 | 未来を照らし続ける芯切り不要な和蝋燭「灯」 |
作品情報
未来を照らし続ける芯切り不要な和蝋燭「灯」
サイズ…65 mm ✕ 28 mmφ、170 mm ✕ 22 mmφ
素材…櫨蝋、和紙、藺草、竹串 または 爪楊枝
和蝋燭は、櫨の実から得られる植物性の木蝋を用いた日本固有の蝋燭です。
洋蝋燭がなく電気による照明がない時代にあっては、「照明=和蝋燭の灯」で、さらには、昔から葬儀や法事などで献灯が行われるなど宗教との関りも深く、蝋燭の灯はお彼岸やお盆に迎え火を焚き、歴史を生きた先祖と現代を生きる私たちとを結ぶ役割を果たしたとも考えられています。
そして、和蝋燭に手描きで草花を描いた「絵蝋燭」は、東北や北陸などの雪深い地域で、お仏壇に本物の花が飾れない冬場の代用として庶民の間に広まったとされています。このように、昔から和蝋燭が人々の宗教や生活に根付いてきた一方で、明治期以降は、西洋パラフィンによる洋蝋燭の流入や電気の普及により、需要が激減しています。この様な状況において、特別な時間と空間に灯される静かで癒されるゆらぎの炎を灯し続けるには「芯切り」という作業を定期的に実施する必要があり、それが普及の障壁の一つとなっています。神社・仏閣においてもこの手間のために、和蝋燭離れが進んでいます。
このままでは、伝統の癒しの灯が途絶えてしまうということを聞き、科学の力を使って「芯切り」を必要としない和蝋燭を開発し、伝統の和蝋燭の灯を「芯切り」を必要とせずに灯し続けることを目指しました。 この『芯切り不要な和蝋燭「灯」』は、伝統工芸と科学教育が手をとりあって示す、未来につながる和蝋燭のかたちの一つの提案であり、従来、芯切りが必要がために制限されていた日常生活での使用においても展開されることを期待するものです。

審査委員の講評
片平秀貴(丸の内ブランドフォーラム代表)
① 作品の概要
この試みは、もはやほとんど使われなくなり、作り手も激減している和蝋燭に注目し、その実用上の課題である「芯切り」という作業を不要にすることによってもう一度和蝋燭を嗜む文化を日本で再興し、さらに世界に広めようという野心的な試みです
② 評価ポイント
和蝋燭は、作者によると「全国に300~400軒あった和蝋燭業者も、現在では20軒を下回る」とのこと。この絶滅寸前のモノ×文化に注目し、その実用上の課題を洗い出したうえで、和蝋燭文化の再興を期す、そしてさらには、それの海外への普及も視野に入れている、というこのプロジェクトの目的は、まさに「和文化グランプリ」の趣旨にぴったりのもので、多くの委員の賛同を得ました。
評者がさらに加えたいのが、応募書類から伝わる出品者の熱量です。「コンセプト」の部分の記述は、何をどう解決し、どこを目指したいのかが過不足なく綴られていて、その字数は他のどの出品者のものをもしのいでいるのではと思われます。字数が多ければいいという訳ではなく、すぐには分かりにくい和蝋燭とその周りの文化の課題を丁寧に記述し、それをどう解決したかが述べられていて、行間から漂うこの作品に込められた出品者の熱量に、感銘を受けました。
欲を言うと、通常の和蝋燭に比べて「芯切り」が不要なことを示す実験データも添えられているとより説得的だったかと思います。
③ 文化的・芸術的意義
和蝋燭が、電気がない江戸時代の主要な光源だったこと、また(応募書類によると)「お彼岸やおお盆に迎え火を焚き、歴史を生きた先祖と現代を生きる私たちを結ぶ役割を果たした」ことを考えると、和蝋燭文化の復興は、「和文化グランプリ」の趣旨からも、大変意義深いことと考えます。
④ 今後への期待
ぜひ、国内にとどまらず、海外に発信していただきたい。そのために、二つのことが望まれます。SUSHI、MANGAなど適切なネーミングと、奥深い和蝋燭文化を伝えるストーリーの二つです。前者は「WA-RO」あたりでしょうか。後者は、和蝋燭が使われていた過去の様々なシーンを紹介し、「静けさと癒し」を訴えるのもいいかと思います。それに加えて、純植物性であることから、お香のようなバリエーションがあると楽しいですね。
プロフィール
兵庫県立宝塚北高等学校 グローバルサイエンス科 3年 小田直弥・奥野泰生・佐藤友哉・太田凌輔

令和5年 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けた、兵庫県立宝塚北高等学校グローバルサイエンス科へ入学。
探究活動を中心とした教育プログラム「GSⅠ」「GSⅡ」「GSⅢ」をとおして、グローバル社会を牽引する科学技術系人材としての知識や技術、精神を学ぶ。
令和6年 2年生では短期研修で米国シアトルに滞在し、Boeing社やMicrosoft社、ワシントン大学を訪問し、グローバルな視点を育む。それと同時に、「芯切り不要な和蝋燭の開発」をテーマに課題研究に取り組む。
兵庫県で唯一の和蝋燭メーカーである有限会社松本商店を訪問し、和蝋燭について教えを受ける。
◆受賞者ホームページ
宝塚北高校HP: https://dmzcms.hyogo-c.ed.jp/takarakita-hs/NC3/
和蝋燭メーカー 松本商店HP: https://www.warosoku.com/
宝塚北高校instagram: https://www.instagram.com/tkk_seito_official/?igsh=MWZla3QwMGp1NmFjbA%3D%3D#
和蝋燭メーカー 松本商店instagram: https://www.instagram.com/warosokumatsumoto/
◆受賞コメント
この度は優秀賞を賜り、誠に光栄に存じます。
本研究は高校での探究活動の一環として取り組んだものであり、私たちの努力がこのような形で評価されたことを大変嬉しく思っております。また、本研究を支えてくださった松本商店様、先生方、そして研究のきっかけを与えてくださった先輩方に心より感謝申し上げます。この研究が和蝋燭の普及に寄与し、ひいては和文化の継承と発展に繋がることを願っております。
この度は誠にありがとうございました。

