| 賞 | 優秀賞/Excellent Award |
| 受賞者 | 株式会社 ユーバイエヌアーキテクツ 建築家 占部将吾+西島要+佐藤元樹/ 有限会社 ひわだや 桧皮葺師 佐々木真 |
| 工芸・美術部門/ その他分野の作品・またはそれらの組み合わせで制作された作品 |
SORI |
作品情報
SORI
サイズ…SORI[L]φ400/H179 [S]φ210/H117
素材…桧皮・和紙・鉄
日本古来の屋根葺工法である「桧皮葺」を用いて、建築家と桧皮葺師のコラボレーションにより誕生した照明プロダクトです。自然素材を用いて優美な曲面を描くことができる桧皮葺の特徴を活かし、神社仏閣の屋根を想起させる造形としています。国宝・重要文化財に使用される桧皮葺の屋根工事で発生する未利用材を活用した、サスティナブルかつラグジュアリーなデザインです。格式高い存在である桧皮葺を日々の暮らしの中にそえることで、日本の伝統美を身近に感じることができるプロダクトです。

審査委員の講評
須田賢司(重要無形文化財「木工芸」保持者 (公社)日本工芸会理事、参与、木竹工部会長 木工藝学林清雅舎主宰)
古来日本では植物素材で屋根を葺く。材料は、茅葺きとして一括して扱われるススキ、カリヤス、ヨシなどがすぐに思い浮かぶ。東京の地下鉄駅に茅場町とあるくらいこれらは身近なものとして維持管理され確保してきた。
このいわば棒状の植物の茎を用いるほかに、板状のものを用いる葺き方もある。「杮(こけら)葺き」「檜皮(ひわだ)葺き」である。中でも檜皮葺きは日本独自の伝統技法としてユネスコ無形文化遺産にも登録されている。主に清水寺などの寺院や神社に用いられ優美な曲線を描き重厚で荘厳な雰囲気を醸し出す。この檜皮葺きは10年サイクルで檜皮が採取可能なこともあり茅葺と共にSDGsの立場からも興味深い。しかしこれら植物素材によるすべての屋根葺きが今存続の危機に瀕している。いずれも材料の確保、加工(拵え)、施工の各工程を行う熟練者の不足に直面している。
その現状に一矢を報いたいとの作者の熱い思いがこの作品になったと言える。檜皮葺きを身近な生活の中に取り入れ、この技法に理解を深め、この技法が生み出す優美な曲線美を堪能してほしいとの作者の願いは十分に感じられる。
「SORI」とは「反り」のことであり、檜皮葺き屋根が生み出す美しい反りに通じ、そのカーブを照明器具に取り込んだところが面白い。毎日目にする器具を通して日本古来の独自の曲線を感じられる。 檜皮和紙を内張し柔らかな反射光を生み出した。また要所を銅張にして耐久力とシャープさを実現し、照明器具としての実用性にも十分な配慮がうかがえる。
建築美・材料・技法をスケールの全く異なる身近な器具に違和感なく取り込んだ視点・力量を生かし、例えばフロアースタンドなどへの更なる展開を期待したい。
プロフィール
株式会社 ユーバイエヌアーキテクツ 建築家 占部将吾+西島要+佐藤元樹/有限会社 ひわだや 桧皮葺師 佐々木真
【ユーバイエヌアーキテクツ】
占部将吾と西島要による建築家ユニット。ホテルや集合住宅、インテリアやプロダクトなど規模の大小や用途を問わず様々なプロジェクトを手掛けている。SORIのデザインチームとして佐藤元樹が参画し、日本の伝統的な建築文化を新たな形で継承することを目標に活動している。
【ひわだや】
創業 天保年間(1830年代)。日本の伝統的な屋根技術工法である桧皮葺を中心とした社寺等屋根工事業に従事し、主に西日本を中心とした国宝・重要文化財の修復を行っている。代表の佐々木真は、山口県内唯一の桧皮葺師。近年では、国宝 瑠璃光寺五重塔の桧皮葺屋根葺き替え工事にも携わっている。
◆受賞者ホームページ
HP:http://s-o-r-i.com/
Instagram:https://www.instagram.com/sori_hiwada/
◆受賞コメント
この度は、優秀賞に選出していただき大変嬉しく思います。日本古来の屋根葺工法である「桧皮葺」の魅力を、より身近に多くの方々へ伝えたいという想いから、SORIをデザインしました。和の空間だけでなく、モダンな空間にも合う照明プロダクトとして、様々な空間に日本の伝統美のエッセンスを与えられるプロダクトを目指しました。今後も日本の感性を大切にしながら、伝統文化を未来へ継承する活動をしていきたいと考えています。



