2025優秀賞|株式会社 竹影堂 金工作家 錺職人 竹影堂 榮眞

優秀賞/Excellent Award  
受賞者 株式会社 竹影堂 金工作家 錺職人 竹影堂 榮眞
工芸・美術部門/金工 南鐐 點線面 湯沸

作品情報

南鐐 點線面 湯沸

サイズ…大:W 16.8㎝ D 13.7㎝ H 18.8㎝
素材…純銀

点から線。線から面への広がりを湯沸に表現しました。
金属は機械が進歩することで工業素材として評価が高く、
金属を一から人の手加工で作り上げることを想像できる方は少なくないです。
しかし伝統的な手法を使い、あえて機械を使わない金工の世界を多くの方々に知って貰いたい。
本体は金鎚と当て金を使った鎚起。他、口、持ち手、蓋、摘み、鋲と全て手加工しています。
持ち手には通常藤巻をするのですが、線と面を出すために、柔らかい正絹の糸で自ら巻いています。
又、素材として使用した銀は紀元前の時代から什器類、宝飾品、コインなどに用いられ、
手加工しやすく、個人での再生可能な素材でありその存在は後世に残ります。
日本でも、神具、仏具、刀装具、茶道具、装身具等、江戸時代後期まで機械を使わず、
様々な装飾技法を生み出し優美な工芸品が残されています。
この作品もいろいろな方に見て、知って、使っていただきたいと願っています。

GP5優秀賞

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審査委員の講評

外舘和子(多摩美術大学 教授、工芸史家)

南鐐とは精錬した上質の銀を意味し、その銀板を金づちで叩いて成形した湯沸かしです。当てがねと金づちを巧みにコントロールする作者の技術により、四角形の面取りがなされたモダンな形状の湯沸かしとなっています。四角形は、湯沸かしの本体から蓋の面の下方にまで続き、全体の一体感を強調しています。また、四角形の面取りのラインそのものを強調し過ぎず、ややおぼろげな線にとどめることで、銀の柔らかな質感も生かされています。注口の造りと本体とのバランスも吟味されており、湯を注いだ際のキレもよいことでしょう。
また、こうした金属製の湯沸かしの持ち手には、通常、籐を巻きますが、作者によればこの作品では絹糸が用いられており、糸の線が滑らかな面を形成しています。
歴史を振り返れば、このような湯沸かしは、お茶の世界で育まれてきました。高価な金属を用いて作られることから、さまざまな茶道具と同様、上流階級のステイタスを示すものでもありました。
ペットボトルの煎茶を飲むことが当たり前となった今日、この湯沸かしは、湯を沸かす楽しみ、注ぐ歓びを味わう文化を取り戻すきっかけにもなりそうです。こうした湯沸かしを、自身の手で触れる楽しみもまた、扱う人々を豊かな気分にさせることでしょう。
 

プロフィール

株式会社 竹影堂 金工作家 錺職人 竹影堂 榮眞

GP5優秀賞
<略歴>
1958年 京都出身(本名:中村 佳永)
1973年 父・六代目三世竹影堂榮眞 (中村 精一郎) に師事
1990年 京錺(株)竹影堂を設立、三世榮真の命により竹影堂佳永の称号を得る
2007年 京都伝統工芸大学校 金属工芸専攻科講師 就任
2009年 四世竹影堂榮眞を襲名
2018年 京都府伝統産業優秀技能者 表彰
京都工芸美術作家協会・京都府匠会 所属
金属産業の機械化が進んだ現代においても、手作業にあえてこだわり、茶道具の制作や高い芸術性を生かした作品展を開催
京錺の魅力的な仕事を伝え、現在も後継者の育成に努めるべく学生の指導に当たっている

<受賞・展覧会歴他>
1991年 大徳寺 玉林院 竹影堂展
1992年 芸術文化交流の会にて高円宮憲仁殿下、久子妃殿下の御賞賛を頂く
1997年 京都高島屋美術工芸サロン個展
2002年 神輿金具の華鬘の検証及び復元製作
2004年 東京京王百貨店 個展
2010年 京王百貨店・京都高島屋 襲名展 
2011年 大徳寺 聚光院 庫裏 引手・釘隠し 製作
2018年 京都髙島屋、京都野村美術館 還暦展
2022年 京都髙島屋『七代 竹影堂榮眞・中村鎚舞 茶の湯金工展』 など

受賞者ホームページ
HP:https://chikueidou.com/
Instagram:https://www.youtube.com/channel/UCmtOXup2vsgvGFE5HZi21iQ
受賞コメント
この度は栄えある賞を賜り、大変嬉しく感謝申し上げます。
私が作品に用いる素材は金属ですが、近年の技術の発展で、金属が人の手で加工できる事を知る方は少ないと思います。
金属の加工は紀元前にさかのぼり、私の家系も、電気もガスも無い江戸時代から金属加工の職人として、現在も技術を受け継いでおります。
今回受賞しました作品は、職人としての技術に基づき、新たなデザインとコンセプトで表現しました。
今後も金属と真摯に向き合い、新たな発想と伝統的な技術で、和文化の大切さや素晴らしさを知って頂けるような作品づくりに努めてまいります。
この度は誠に有難うございました。