2025グランプリ|赤木明登(株式会社 木地屋 代表取締役 / 塗師) ・株式会社 ミナモト建築工房(代表取締役 青江整一 ・大工棟梁 原田敦士) ・弥田俊男(弥田俊男設計建築事務所 / 岡山理科大学准教授 / 建築家) ・木下洋介(木下洋介構造計画 構造設計者)

グランプリ/Grand Prix  
受賞者 赤木明登(株式会社 木地屋 代表取締役 / 塗師) ・株式会社 ミナモト建築工房(代表取締役 青江整一 ・大工棟梁 原田敦士)・弥田俊男(弥田俊男設計建築事務所 / 岡山理科大学准教授 / 建築家) ・木下洋介(木下洋介構造計画 構造設計者)
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プロデュース部門/和文化振興の企画・支援・プロデュース活動 小さな木地屋さん再生プロジェクト/能登地震・被災からの「工藝的復興」活動

活動情報

小さな木地屋さん再生プロジェクト/能登地震・被災からの「工藝的復興」活動

地震による倒壊・廃業・街並み消失への危惧の中、唯一無二の風景と和文化(=工藝)を途絶えさせる訳にはいかないと考えた輪島の塗師の呼びかけの元、全壊した 輪島で最高齢の木地師の工房建物を専門家有志の知恵と人力・手仕事の結集によって驚くべきスピードで復旧・再生させた、輪島の「工藝的復興」の第一歩である。

輪島塗の製造は職人による分業制となっており「塗師(ぬし)」を統率する親方が受注から企画・デザイン、職人の取りまとめ 販売までの全体プロデュースを行い職人の手から手へと渡されながら完成する。

どの職人も欠くことができない大切な存在であり、職人の工房兼住宅が軒を連ねる街並みが輪島独自の風景を形成していた。

「現在の復興の標準手法である公費解体、更地への新築以外の道はないのだろうか」と模索を始めたひとりの輪島塗師の主導のもと、廃業危機に陥った江戸時代から続く輪島最高齢木地師の工房の最速での再稼働を目標に有志で集まった 建築家・構造設計者・大工らと塗師が一体になり、知恵と手仕事の連携によって被災後3ヶ月で再生させた、いわば「工藝的復興」の起点である。

地域固有の風土・文化継承への強い意思と人の連携が切り開く、新たな復興のあり方を見出す、いわば和文化存続のための重要な活動と考えている。

GP5グランプリ受賞活動

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審査委員の講評

秋元 雄史 (東京藝術大学名誉教授 美術評論家)

今年新設されたプロデュース部門から栄えあるグランプリを受賞したのが「小さな木地屋さん再生プロジェクト」である。
2024年の能登半島地震で大きな被害を受けた輪島は伝統工芸の産地として有名である。代表的な工芸である輪島塗の生産は、震災後壊滅的となり、街の復興もままならない中で、回復もなかなか進まない。倒壊した工房の再生を果たし、その中でいち早く、輪島塗の再開を目指したのがこのメンバーである。中でも木地師が廃業する中で、技術継承と生産者育成を目指して始めたのが「小さな木地屋さん再生プロジェクト」である。名前は、かわいらしく、謙虚だが、活動は、基本に着目した本格的なもので、力強く、スピード感に溢れる。「震災直後に、施主が掲げた目標は、木地師の廃業回避と輪島で最速の再稼働による伝統の継承」である。志は高い。
プロジェクトリーダーの基本的な考え方には、基本を押さえつつ、柔軟な発想によって最も大きな課題を取り除こうとする意思が伺え、それについていく若手の漆芸職人がいる。希望の持てるプロジェクトである。

プロフィール

赤木明登(株式会社 木地屋 代表取締役 / 塗師) ・株式会社 ミナモト建築工房(代表取締役 青江整一 ・大工棟梁 原田敦士)・弥田俊男(弥田俊男設計建築事務所 / 岡山理科大学准教授 / 建築家) ・木下洋介(木下洋介構造計画 構造設計者)

GP5グランプリ受賞者赤木明登(株式会社 木地屋 代表取締役 / 塗師)
岡山県出身
中央大学文学部哲学科卒業、編集者を経て、1988 年に輪島へ 輪島塗の下地職人・岡本進のもとで修行
1994 年 独立。現代の暮らしに息づく生活漆器=「ぬりもの」の世界を切り開く
1997 年 ドイツ国立美術館「日本の現代塗り物十二人」展
2000 年 東京国立近代美術館「うつわをみる 暮らしに息づく工芸」展
2010 年 岡山県立美術館「岡山美の回廊」展
2012 年 オーストリア国立応用美術博物館「もの 質実と簡素」展
2017 年 樂翠亭美術館( 富山市)「形の素」展、國學院大學博物館「モノの力ヒトの力」展
2019 年「 興福寺中金堂楽慶法要献茶道具」を制作「興福寺宝物殿」に収蔵、古川美術館( 名古屋市)「茶 祈りと楽しみ」展
2021 年 石川県立輪島漆芸美術館「メイドインワジマ」展
2022 年 古川美術館 (名古屋市 )「 形の素」展に出品
2023 年 能登の山中に、料理人北崎裕とともに、自らの美意識を結晶させた日本料理オーベルジュ「茶寮 杣径」を開店させる
2024 年 能登地震にて被災後すぐに輪島最高齢の木地師・池下満雄氏の工房の再生に着手。7月に池下氏が急逝したのち(株)木地屋を法人化、「小さな木地屋さん」を拠点として木地師業を引き継ぐ。また、編集人張逸雯とともに、IT 化された時代における情報と物質性の関係を問いなおす書籍を手がける専門の出版社「拙考」を設立 漆藝家としての活動のみならず執筆活動も20 年にわたって継続的に行っている
主な著書
『漆 塗師物語』2006 年、文藝春秋
『美しいもの』2006 年、新潮社
『美しいこと』2009 年、新潮社
『名前のない道』2012 年、新潮社
『二十一世紀民藝』2018 年、美術出版社
『工藝とは何か』2024 年、拙考

GP5グランプリ受賞者

株式会社 ミナモト建築工房 (代表取締役 青江整一・大工棟梁 原田敦士)
株式会社ミナモト建築工房は1991年に岡山で創業した工務店
持続可能な資源である木造にこだわり、熟練の技術を持った職人ネットワーク「ミナモト施工協力会」とともに、現在まで約1400棟の新築住宅を手掛けています。「いま、わたしたちたちにできること」を企業理念として掲げ、自然を生かし、自然と共生しながら豊かな人生と未来を築くための家づくりを行っています。また、「広い中庭を10 家族が共有するまち」など自然を身近に感じ、近隣コミュニティーとの無理のない関係性を構築するまちづくりプロジェクト、さらに子育て支援など地域と人をつなぐ活動「くらしのたね」、里山の知恵と都市のテクノロジーを融合して行う市民の手による防災社会実験「都市の森ニューギャザリング」にも取り組み、地域が自立し豊かにつながりあう循環型の暮らしづくりを目指しています。

弥田俊男(弥田俊男設計建築事務所 / 岡山理科大学准教授 / 建築家)
1974年 愛知県生まれ
1996年 京都大学工学部建築学科卒業
1998年 京都大学大学院工学研究科建築学専攻修了
1998~2011年 隈研吾建築都市設計事務所
2011年 弥田俊男設計建築事務所の設立と同時に、岡山理科大学工学部建築学科准教授に着任
設計を手掛けた「春日大社国宝殿」が、平成29年度 耐震改修優秀建築表彰「国土交通大臣賞・耐震改修優秀建築賞」受賞、第28回BELCA賞受賞
2018年「路面電車乗り入れを含めた岡山駅前広場デザイン検討業務委託」プロポーザルで最適提案者に選定され、岡山駅東口広場全体のリニューアル工事が現在進行中

木下洋介(木下洋介構造計画 構造設計者)
1978年 神奈川県生まれ
2001年 東京工業大学(現・東京科学大学)卒業
2003年 同大学院修了
2003~2011年 金箱構造設計事務所
2011年 木下洋介構造計画設立
2011年~ 2023年 工学院大学、芝浦工業大学大学院、東北芸術工科大学非常勤講師
2024年~現在 東京科学大学非常勤講師
2016年 JSCA賞新人賞(オガールベース)
2020年 日本構造デザイン賞(ちぐさこども園)
2025年 木材利用推進コンクール 内閣総理大臣賞(NISHIGAWA TERRACE)受賞
著書に「構造設計を仕事にする-思考と技術・独立と働き方-」「子育てしながら建築を仕事にする」(共に学生出版社、共著)

受賞者ホームページ
https://www.sekkousm.com/thestoryofasmallwoodturner-sworkshop?srsltid=AfmBOorNx55-JkLW10MV593n_rfleBDU5tl_DvmlDmBy715ipnMwx8hN
受賞コメント
大災害の被災者になるということは残酷な体験ではある。
だが、その後起きた数々の出来事は、その悲惨を埋め尽くして 逆に大げさではなく人類の未来に希望を与えるものだった。
「輪島塗の技術を未来へと繋ぎたい」そのひと言で瞬時に全国から多大なる支援と寄付が集まった。
そのすべては、人の心のあたたかさ誠実さから自ずと発したものだ。
人間ってすばらしい。
そしてこの活動をどこかで見てくださって顕彰してくださる方々もおられる。
さらなる勇気をいただくとともに心底ありがたい思う。