賞 | 学生賞/Excellent Student Award |
受賞者 | 方 笑晗 |
受賞作品 | 「内側の世界一昼」銀銅象嵌筥 |
作品情報
作品情報:「内側の世界—昼」銀銅象嵌筥
材質:銀、四分一、赤銅、銅
サイズ:50*50*55mm
技法:切り嵌め象嵌
仏教用語では「一花一世界(一輪の花は一つの世界)」という言葉がある。
小さな、常に無視されたものも一つ世界になれ、その内部には強い生命力と存在の価値もあるでしょう。
うわべのない石を造形とした筥、開けた後、内部に芝生や星空などが見える。一方、その石は私たちの目の中で高価ではない、平凡な物事を象徴した。一方では、石は自分の個性を持って、風と芝生に欠かせない仲間として世の中に生き生きと存在している。私は筥の内部と外部を二つの世界として考えていて、単純と複雑、連通と隔絶、外見と中身の対比を考えながら作品を作り続けた。
審査委員の講評
秋元 雄史 (練馬区立美術館館長)
作品名「内側の世界―昼」は、銀、銅、あるいは四分一という合金を使用した金属工芸作品で、異なった金属を使用して紋様を形成する象嵌技法を使用した秀作である。形状は筥型で、内箱と外箱で形成されており、その構造が本作のテーマである「内側の世界」を表す仕掛けになっている。
実は、同名の「内側の世界」の「夜」と名付けられた「昼」と対になった作品がある。そちらは「昼」の銀ベースの明るい色調とは対比的に、銅色をベースにした暗めの色調によってまとめられたものである。サイズも「昼」と比較すると「夜」の方が二回りほど大きい。タイトルと作品の形式を見ると二つで一つの対作品と見た方がいい。
タイトルにもあるように「内側の世界」とは、箱を開けた時の世界観を示しているだろう。外箱があるときとそれを取って現れる内箱だけの世界とを分けて、内面と外面の世界、あるいは事実と空想、また物事の裏表などの二面性を表す構造に見立てているのだろう。そして、内箱だけの状態を「内側の世界」と呼び、タイトルが示すように一種の心象風景を描き出す舞台にしている。外側は岩に見立てられていて、硬い、あるいは変わらない世界であるが、内箱には、色とりどりの植物が描き出され、生命感が溢れる世界として表される。
金属象嵌という伝統技法の魅力だけに終わらずに、その技法を作者の世界観を描き出す表現にまで昇華させているところに作者の力量が窺える。
作家プロフィール
方 笑晗(ホウ ショウカン)
1993 中国生まれ
2011-2015 清華大学美術学院デザイン科工芸美術科(金属アート) 学部卒業
2017-2019 東京藝術大学大学院美術研究科 工芸科彫金専攻 修士修了
2019-2024 東京藝術大学大学院美術研究科 工芸科(彫金)博士後期課程 満期退学