準グランプリ|株式会社 竹中工務店、一般社団法人 聴竹居倶楽部

準グランプリ/Semi-grand prix
受賞者 株式会社 竹中工務店、一般社団法人 聴竹居倶楽部
受賞作品 重要文化財 建造物「聴竹居」本屋・閑室・茶室(下閑室)の保存と公開を通じて伝統と未来を再考し、和文化の醸成と発信に貢献する活動

作品情報

重要文化財 建造物「聴竹居」本屋・閑室・茶室(下閑室)の保存と公開を通じて伝統と未来を再考し、和文化の醸 成と発信に貢献する活動

ジャンル…活動

「聴竹居」は、1928(昭和3)年に竹中工務店に在籍していた故・藤井厚二が、京都府大山崎町に建てた5回目の自邸である。和洋の生活様式の統合とともに日本の気候風土との調和を目指した昭和初期の木造住宅として、2000年にDOCOMOMOJAPANの日本を代表する「モダニズム建築」の最初の20選に選定され、2016年末に竹中工務店が周年の文化的事業の一環として取得、2017年に重要文化財に指定された。この先駆的存在で歴史的・文化的価値が極めて高い「聴竹居」を、地元住民と連携して保存と活用を実践し一般公開等を通じた建築文化の発信を通じて伝統と未来を再考し、和文化の醸成と発信を継続的に行い社会貢献していく。

第4回日本和文化グランプリ 準グランプリ受賞

  • GP4グランプリ受賞作品
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審査委員の講評

堀越英嗣(芝浦工業大学名誉教授 東京藝術大学客員教授 建築家・堀越英嗣ARCHITECT 5 代表)

「聴竹居」は1928年に竣工した環境建築の先駆けとなる建築家藤井厚二の自邸である。明治より入ってきた欧米の生活様式と日本の気候風土を生かした伝統建築を合わせた新しい「日本の住宅」の理想系を追求した。それは形式としての「建築」ではなく、日常の暮らしに日本の伝統文化の振る舞いに時代の最先端の技術を融合することで、家族の楽しい日常生活が送れる空間を創造するという、時代を画する建築である。
しかし長い間、この建築は大山崎の自然の中に静かに埋もれて世に出ることはなかった。その間、ご遺族によって維持されてきたが、次第に老朽化してきた時に、意識ある建築家・研究者が調査と保存活動を始めたことで、次第にこの建築の価値の再発見の機運が広まってきた。そして地域住民のボランティア組織が生まれ、公開され、和文化を語り合う場所としても活用されている。
優れた文化財であっても、多くの人にその価値と意義を理解してもらうには、経験することが最も大切であることをこの活動は示している。その成果として2017年に重要文化財に指定され、一般公開されて、現在に至っている。現在も生きた文化財として学生の視察や、約100年前の環境建築の意義を解き明かす研究対象となっている。この建築は心地よい家族の居場所と一体感のある空間の構成が、現代住宅にも大きな示唆を与えているが、その細部に至るまで日本の伝統的職人技術の粋を集めた優れた実例でもある。
「聴竹居」の竣工時は、日本の伝統的職人技術と先端技術が融合(和)することで環境と調和した豊なすまいという新たな建築の可能性を切り開き、竣工後にそれを多くの人々が継承して利活用していくことを含めた全体が「和文化」としての建築の意義あるあり方を示している。
和文化を継承する伝統建築が失われつつある現在において、次世代に再発見されることの重要性を示す活動は、日本和文化グランプリの準グランプリに相応しいと考えます。

 

プロフィール

株式会社竹中工務店

GP4準グランプリ受賞作品竹中工務店は大手総合建設会社の中では唯一の非上場かつ建築専業で、従業員数約8,000人規模の企業です。1610 年(慶⻑15年)に名古屋で創業、1899年(明治32年)に神戶で近代建設業として創立し、東京タワー、日本武道館、東京ドーム、あべのハルカスなど、都市のランドマークとなる数多くの建築物を手掛け、建設業界と社会の発展に寄与してきました。
宮大工であった初代 竹中藤兵衛正高から代々培ってきた 棟梁精神は、竹中工務店の経営理念「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」に受け継がれ、技術の竹中、品質の竹中と呼ばれる企業活動の根底に脈々と流れています。 手がけた建築物を「作品」と呼び、それらを通した活動は国内外へ、また建築の枠を超えて、豊かで安心な「まちづくり」へと広がり、持続可能な社会の実現に貢献しています。

 

一般社団法人 聴竹居倶楽部

GP4準グランプリ受賞作品
「聴竹居」が在る地元・大山崎町の住⺠主体で2008年に結成された任意団体 聴竹居倶楽部を前身に2016年末「聴竹居」が竹中工務店の所有になった際に一般社団法人化。竹中工務店から業務委託をうけるかたちで、「聴竹居」の日常の維持管理と一般公開や特別公開での見学案内を行うと共に、自主事業として講演会や展覧会の企画実施など、約30名の近隣在住のスタッフを中心に地域全体で保存公開を行い、建築文化の醸成と発信に努めています。 倶楽部内の活動として「藤井厚二の日本趣味を考える会」を組織し、今日的な視点からの藤井厚二が想い描いた日本の住宅での暮らしの検証も行っています。また、大山崎町にある千利休の唯一現存する茶室・国宝「妙喜庵・待庵」をはじめ6つの重要文化財の所有者・管理者が語りあう場「大山崎町重要文化財ネットワーク」も設立(事務局 を聴竹居内に置く)、地域での誇りや愛着の醸成とまちづくりにも貢献しています。

受賞者ホームページ
http://www.chochikukyo.com/index.html

Facebook
https://www.facebook.com/chochikukyo

受賞コメント
この度は、木造モダニズム建築「聴竹居」を生かした活動に対して栄えある賞を授かり、関係者一同大変嬉しく思います。藤井厚二は、真に日本の気候風土と日本人の感性に適合し、欧米の椅子式のライフスタイルや、家事労働を軽減する家電を備えた世界レベルの「日本の住宅」を追求、昭和3年に完成形となる自邸「聴竹居」を建てています。これからも、地元住民と共に「聴竹居」の保存・公開・活用を進め、今日的な視点で藤井厚二の「日本の住宅」への想いを捉えなおす活動を通じて、伝統と未来を再考し、和文化の醸成と発信を行っていきます。