賞 | 優秀賞/Excellent Award |
受賞者 | gftf 小栁津 仁 |
受賞作品 | 未来を宝ものにする、和紙のキッズメジャー。 |
作品情報
未来を宝ものにする、和紙のキッズメジャー。
サイズ…W 148 D 20 H 1200 (mm)
素材…山中和紙・ブナ・竹・絹蝋引紐
「未来を宝ものにする、和紙のキッズメジャー。」は「子どもの未来」と「日本の伝統」を「大切にしたい」という気持ちで、つかう人・つくる人・つづく人を紡ぐプロダクトです。
キッズメジャーを壁に吊るし、記すことで子どもの成長を感じ、丸めて思い出を桐箱に保管できます。かつての家族の風景は伝統和紙と供に、また日常となります。
審査委員の講評
片平秀貴(丸の内ブランドフォーラム代表)
「未来を宝ものにする、和紙のキッズメジャー」、受賞おめでとうございます。
「はしらのきずはおととしの 五月五日のせいくらべ ちまきたべたべにいさんが はかってくれたせいのたけ ・・・・・」
この受賞作品に出合って「背くらべ」の童謡の一節を想い浮かべた方は少なくないのではと思います。柱に印をつけて子供の成長の軌跡を記し残し顧みる。子供の成長は、親のお宝であり家族のお宝です。それを目に見える形で残そうという文化が昔の日本にはあったのでは、ということをこの歌は想像させてくれます。子供の誕生の証である「臍の緒」を大切に保管する習慣も日本固有のものと聞きました。誕生から成長に至る軌跡をモノに残して皆で愛で、喜びを分かち合うというのは、我が国に固有の素敵な習慣なのかもしれません。
もはや日本の多くの家には「はしら」はありません。いつの間にか「背くらべ」は昔の童謡の中だけの世界になってしまいました。そんな中、この作品は新しい時代の「背くらべ」を提案しているのだと思います。モノとしては、すてきな桐箱に収められた超長尺の短冊状の和紙で、その和紙は応募資料によると800年の歴史のある手漉き伝統和紙「山中和紙」を使用しているという。それ自体、和文化の作品として評価に値しますが、この作品の本当の価値は、モノとしてよりも「背くらべ」の習慣を日本発の文化として世界に伝えたい、というところにあると評価しました。丁寧に用意された応募資料も好感が持てます。その中で、この作品が使われている生活シーンの写真が2頁にわたって含まれていて、作者の意図もそこにあることがうかがえます。
昨今、世の中は「いま」に埋没していて、過去を振り返り、未来の夢を語るという雄大な時間軸が欠けているような気がしてなりません。この時期に、世界に対して「未来に贈ることで伝統を繋ぐ」(応募資料の言葉)というメッセージを発信することは今日の和文化の代表として誇らしいことと考えます。
最後に一つ注文ですが、和の空気が漂うクレヨンのような筆記具がもう一つ別の桐箱に入ってついてくるとさらにすてきな作品になるのでは、とご提案したいと思います。改めておめでとうございます。
プロフィール
小栁津 仁
1986年 愛知県生まれ
2009年 京都精華大学 卒業
2023年8月 gftf(ギフティフ)「未来を宝ものにする、和紙のキッズメジャー。」の作家活動を始める。
2024年5月 岐阜県飛騨市地域おこし協力隊【山中和紙振興プロジェクト】に着任。
山中和紙の産地である岐阜県飛騨市に移住。作家活動のみではなく、和紙の生産工程の改善と新規販路開拓を行い、「日本一大事にしたい紙をつくる!」を目標に活動をしている。
◆受賞者ホームページ
https://gftf.theshop.jp/
instagram
https://www.instagram.com/w.gftf/
◆受賞コメント
この度は優秀賞に選出していただき誠にありがとうございます。
選考に関わってくださった皆様に作品を評価いただけたことを大変嬉しく思います。
この作家活動を通して「伝統と未来」について、深く考えを巡らせ、様々なことを知り、夢中になり、たくさんの御縁を頂いたおかげで、「今、大切にしたい、今。」があります。きっと受賞できたこともそうです。これからも「今」を大切に活動を続けていきたいと思います。