奨励賞|宮田浩次

奨励賞/Incentive Award
受賞者 宮田浩次
受賞作品 輪奈天鵞絨織 袋帯 七宝華文

作品情報

輪奈天鵞絨織 袋帯 七宝華文

サイズ…W4500 D310 H5(mm)
素材…絹80% レーヨン10% ポリエステル10%

中世ヨーロッパを起源とする輪奈天鵞絨織は王侯貴族やキリスト教の司祭などの権力者に珍重された織物です。我が国には1543年(天文12)ポルトガルから伝来した鉄砲がビロードの織物に包まれていたとされています。今から400年以上昔のことです。珍しいビロードマントなどは 織田信長公をはじめとする戦国大名をも魅了しました。江戸初期には我が国でも生産が始まったとされ、針金の上のタテ糸を熟練の手技でカットすると毛羽立ちビロードになり、カットせずに針金を抜くと輪奈織となります。本作品は、古くから伝わる伝統の織物である“輪奈天鵞絨織”にパイルたて糸は 従来一色のところ異なる色や素材を使用し一越一越 針金を熟練の手技で通し、製織後ビロード加工することにより、表現力あふれる織物に仕上げました。

GP4奨励賞受賞作品

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審査委員の講評

上杉孝久(上杉子爵家九代目当主)

古代から近世にかけて、衣装というものは権力者のよって立つ源でした。
中世ヨーロッパでは、キリスト教の司祭らに重用された織物がこの【輪奈天鵞絨織】でした。日本には戦国時代に伝来したと言われ、織田信長や上杉謙信といった戦国大名に献上されました。米沢の上杉神社には今も謙信所用と伝わる天鵞絨織のマントが保存されています。
そのような歴史のある織物【輪奈天鵞絨織】を、現代日本の高度な織物の技術を持ってして新たに作り上げたのがこの作品です。袋帯仕立てにしたことにより、人が身に着け動きが加わり、見る角度によりいぶし銀のような輝きを放つことでしょう。
七宝と華文の複雑な組み合わせは、地味ながら技量の高さをうかがわせるのに充分です。また、吉祥・富貴を表す図柄は、身に着ける人の弥栄を願う想いをしのばせます。歴史の重みを引き継ぎながら、現代にその美しさを改めて問う作品であると思います。

 

プロフィール

宮田浩次(宮田織物株式会社 代表取締役社長)

宮田浩次

1963年 京都生まれ

受賞者ホームページ
http://nishijin-miyataorimono.com/
受賞コメント
この度は奨励賞を頂き誠に光栄に思います。⻄陣の歴史は古く、 今から550年余昔にさかのぼります。 「伝統」。一見重々しく時代かかった響を持つ言葉ですが、 「古いものが古い形のまま残っている」イメージとは正反対の むしろ革新を繰り返してきた結果といえます。 作品は先人達の培った技を受け継ぎ、これに現代のエッセンスを 加え丹念に仕上げました。