| 賞 | 学生奨励賞/Incentive Student Award |
| 受賞者 | 東京藝術大学大学院 工芸科 彫金研究室 修士2年 金工作家 藤本春華 |
| 学生:工芸・美術部門/金工 | ぐるめ金工器物シリーズ [Hamburger ] |
作品情報
ぐるめ金工器物シリーズ [Hamburger ]
サイズ…W 9.2cm D 9.6cm H 7.2cm
素材…銅・銀・真鍮・木材
日本の伝統的な金工の技術を使って、素材の特性を生かし、化学変化で着
色したありのままの金属や七宝の良さや食べ物のモチーフに対する遊び心を感じてもらいたくて制作しています。
バンズも挟まれた具材も全てが塗装を行わない、伝統技法による着色です。彫金の板を加工するという特性を生かし、空洞を作って重ねたハンバーガーを筥として完成させました。バンズの蓋の裏にはズッキーニを忍ばせています。
こうして伝統的な金属の技法を使って食べ物を制作することで、少しとっつきにくい工芸の分野の面白さ、それを使うことができるという楽しさを感じて欲しいのです。

審査委員の講評
三田村有純(東京藝術大学名誉教授 日展理事 江戸蒔絵10代継承)
内部には楠材を轆轤造形した器があり、その外側をあらゆる金属の板金素材を打ち出して金属の色味をだけで色彩豊かなハンバーガーが表現されている。上部が取り外され蓋になる構造であり、中に物をしまうことができる造形物である。緑色のレタス、溶けたチーズ、肉汁溢れるバーガー、バンズの柔らかさの上のゴマなど硬い金属で表現した遊び心は審査員一同から感嘆の声が上がった作品である。
若い世代がこのハンバーガーの中に日本の和文化を見出したのであり、その巧みな造形力とともに記憶に残る作品である。
秋元 梢(モデル)
今回は学生の作品のクオリティが高く、品評会でもどのように評価していったらいいのかと、審査員全員で悩みました。
私自身、和文化グランプリを通して日本の良さや伝統文化の良さを専門家だけでなく、若い人やまだ知らない人に伝えたいと思い、審査員を務めさせてもらっていて、この作品はまさにピッタリだと思いました。
様々な作品が並ぶ中、ハンバーガー?と思いましたが、小物入れになっていて、審査中に集中していた体が、遊び心にほっこりされ、緊張が解けました。
私は専門的な知識はないので、資料を読み、技法を調べて、
塗装ではなく、伝統技法で緑、赤、茶などの様々な色味や風合いで表現されている事を知り、驚きました。
知れば知るほど面白い伝統技術。
作者の方の資料に書いてありましたが、日本文化、伝統的な技術、職人など、敷居が高いと感じられる世界ですが、この『ぐるめ小物入「Hamburger」』のように、伝統的な金属工芸技法を使って作られる事で、
より多くの人に伝統工芸って遊び心もあるんだ!この技法は?など、興味を持ってもらえる、その第一歩にふさわしい作品だと思いました。
実際この小物入れが売っていたら、自分用にも、ギフトにも、手に入れたい作品です。
ハンバーガー以外にも、色んなバリエーションを作ってもらいたいです。
プロフィール
東京藝術大学大学院 工芸科 彫金研究室 修士2年 金工作家 藤本春華

2002年 熊本県生まれ
2025年現在 東京藝術大学大学院美術研究科在籍
◆<受賞歴>
2023年 卒業制作展・メトロ文化財団賞
2024年 KOUGEI Artist Leagueファイナリスト選出
◆受賞者ホームページ
Instagram:https://www.instagram.com/haruka__7216
◆受賞コメント
このたびは栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
第一印象で心を惹きつけ、思わず足をとめていただけるような作品づくりを目指していますが、いままでよりさらに作品に込めた技術や、予想外の仕掛けを通して第二の感動を感じていただけるように制作したのが本作です。これからも、驚きと余韻を併せ持つ表現を探求し、より視覚的な美味しさと感動を魅せることのできる制作に励んでまいります。


